ベトナムの魅力

毎年多くの観光客が世界中から訪れるベトナム。
そんなベトナムには美しく長い海岸線、いくつもの魅力的なリゾート地、8つの世界遺産、繊細で素朴なグルメ、中国やフランスの影響が入り混じった歴史や文化があります。
近年経済発展が著しいベトナムの魅力を5つにわけてご紹介します。

1,ベトナムとはどんな国?

正式名称はベトナム社会主義共和国。

東南アジアのインドシナ半島の東側に位置し、北は中国と、西はラオスやカンボジアと国境を接し、東と南は海に面した南北に細長い国土でタツノオトシゴのような形の国です。

ホーチミン1区のサイゴン川

人口は1億40万人 (2023年統計) でゆるやかに増加ていますが、近年高齢化も徐々に進んでいます。

公用語はベトナム語です。英語はツアーガイドや高級ホテル、高級レストラン以外、あまり通じない印象です。
親日家も多く、日本語の勉強も盛んな為、現地でも日本語を話せる人が他国より多く感じます。

そして、年配者の方をとても大切にします。街中でも見知らぬ年配者への配慮する姿が見受けられます。

またレディーファーストが基本ですので、男性の方は交通機関、エレベーターやショップなど、自然な流れで配慮をお願いします。

またカフェ文化があり、カフェでの休憩や人と交流することは、日常の一部として定着しています。カフェの店舗も多く、コーヒーだけでなく紅茶や抹茶なども人気です。

北部と南部に広がる広大な平野では、稲作がとてもさかんです。

年に二回お米を作る二期作が多いですが、南部では年に三回作る三期作の地域もあります。

ベトナムは世界有数の米の生産国であり、また輸出国です。

ホーチミン市内

北部の首都ハノイは社会主義が色濃く残る政治、教育の中心地で、南部のホーチミンは資本主義国のような経済の中心地です。

中部の海岸線にはダナンやニャチャンなどのリゾート地が点在しています。

北部と南部では、言葉や文化、国民性や性格の違いが想像以上に多くあります。

北部の人は勤勉で少し淡白な印象、南部の人はおおらかで人懐っこい印象。北部と南部はまるで別の国のように感じます。

1986年ベトナム共産党はドイモイ政策を打ち出しました。社会主義体制を維持しながら資本主義経済を導入し、今日まで飛躍的な経済成長を遂げています。

社会主義国というと以前は少し怖い印象でしたが、現在のベトナムはそれを忘れさせるくらいの魅力ある国に成長しています。

今、経済や観光の分野で世界から注目を集めています。

 ホーチミン2区リバーサイドパーク

2,ベトナムの気候

ベトナムは南北1600km以上あり、日本のように様々な気候があります。

北部のハノイはゆるやかな四季があり、夏は蒸し暑く冬は最高気温が10度以下になることも。

中部のダナンやホイアンは雨季 (9月から1月) と乾季 (2月から8月) があります。

6月から8月は35℃以上になる日が多く、また11月から2月は肌寒く感じる日もあります。
9月後半から11月にかけては台風シーズンとなり、特に注意が必要です。

南部のホーチミンは1年中夏日で、雨季 (5月から10月) と乾季 (11月から4月) があります。

雨季は蒸し暑く、スコールが多くなりますが、一日中雨が降る事はあまり多くありません。

乾季も暑くなりますが、少し過ごしやすくなります。乾季でも短時間の通り雨がよくあり、スコールもまれにあります。
12月から1月は暑さも少しやわらぎ、快適な日が多くなります。

各地域のベストシーズンはそれぞれありますが、基本的に暑い時期が多く、幅はありますが雨も一年中あります。

旅行者の方は、自分の目的に合った良いタイミングで行くほうがいいでしょう。

また12月から2月の北部や中部は、思いのほか冷え込む事があります。服装には十分注意してください。

台風シーズンは、渡航前から天気をまめにチェックして留意しましょう。

 メコンデルタの田園風景

3,ベトナムの観光地

ベトナムと言えば長い海岸線があり、美しい海が続いています。海岸線の総延長は、およそ3260キロあります。

北部のハロン湾はベトナムを代表する世界遺産で、海と奇岩が織りなす美しい景観地です。

現地ツアーの日帰りクルーズが一般的ですが、クルーズ船に宿泊するツアーもあります。

ハノイから車で片道3時間弱かかりますので、時間に余裕をもって行きましょう。

首都ハノイはホアンキエム湖を中心とした緑豊かな旧市街が有名です。

旧市街を散策したり、名物グルメを堪能したり、また週末開催のナイトマーケットをブラブラするのもいいですね。

ホーチミン廟やタンロン遺跡など観光スポットがわりと近くにまとまっています。またハノイはハロン湾や山岳地帯のサパに行く拠点になります。

サパは、ベトナム最高峰のファンシーパン山がある山岳地域です。

ファンシーパン山の標高は3143mで、インドシナ半島最高峰でもあります。

ケーブルカーやロープウェイを乗り継いで行けますが、予想以上の高所で、頂上まで行くことは難易度が高い場所です。

事前のリサーチはしっかり行い、天候予備日も考慮しましょう。


雪はありませんが、12月から2月は日本の真冬のように寒くなり注意が必要です。

ホーチミン1区

中部のダナンは美しい白い砂浜のミーケビーチが有名です。
近年リゾート地として開発され、海岸線にはリゾートホテルが立ち並んでいます。


ドラゴンブリッジや五行山、ハン市場など、わりとコンパクトにまとまった観光しやすい都市です。

また近くの観光都市ホイアンはタクシーで1時間弱の距離で、日帰りでも楽しめます。

ホイアンは過去東西交易の中継地と栄えた港町です。旧市街は情緒あふれる街並みで、まるで街全体がテーマパークのようです。

トゥボン川の川沿いには、趣あるカフェやレストラン、土産物店がたくさんありグルメも人気です。

夜には街全体がカラフルなランタンで彩られ、神秘的な世界観になります。

月1回程度開催される、ランタン祭りも有名ですね。

少し離れたバーナーヒルズやミーソン遺跡、フエも、ダナンが拠点になります。
また最近はダナン中心地より少し北に離れたランコービーチも人気です。

中南部にあるニャチャンはフランス植民地時代から栄えたリゾート地です。透明感のある美しい海とビーチがあり、マリンスポーツが盛んです。

またシーフードや泥温泉、テーマパーク (ウィンパール・ランド) 、離島ツアーなどが有名です。
日本から直行便がないのがとても残念に感じます。

ベンタイン市場

南部のホーチミンは活気あるベトナム最大都市です。

近未来的なビル群や歴史的な建造物、また夜景の綺麗な公園など魅力にあふれています。

買い物やグルメも豊富にあり、多種多様な楽しみ方が出来ます。

かつての都市名はサイゴンと呼ばれていましたが、1975年に南北統一後、ホーチミンと改名されました。

観光スポットは1区中心部に集まっており、比較的回りやすいです。現地ツアーは、メコン川ツアーやクチトンネルツアーが有名です。

フーコック島はホーチミンの西200kmにある、ベトナム最大の島です。

ホーチミンの空港から飛行機で約1時間。
日本からの直行便はありませんが、ホーチミンかハノイからの国内線で行くのが一般的です。

ここ数年でリゾート開発され、今一番のおすすめリゾート地です。

美しい海と白い砂浜、そしてサンセットが楽しめるロングビーチのリゾートホテルが人気です。

島内には世界最長のケーブルカーで行くホムトム島のサンワールドや、家族で楽しめる超大型遊園地ヴァンワンダーズなど1日では遊びきれないほどのテーマパークがあります。

またベトナム料理に欠かせない魚醤ヌクマムの産地として有名です。

ベトナムの物価は日本の半分から三分の一程度で、円安でも旅行を満喫できるのも魅力です。

日本各都市からベトナム主要都市に直行便も出ていて、アクセスも便利です。

東京からホーチミンは6時間程度、ハノイなら5時間ほどです。帰国時はもう少し短い時間で帰れます。

時差も2時間と少ないので、休みをフルに使えるところもいいですね。

 ダナンのドラゴンブリッジ

4,ベトナムの歴史

紀元前2000年頃から水稲耕作が東南アジア地域に広がりました。

その後ドンソン文化が広がり、各地に部族国家が誕生。

紀元前207年に中国広州からベトナム北部に南越王国を建国。

以後南海貿易で栄えました。

しかし紀元前111年に漢の武帝によって征服され、以後1000年間ベトナム北部は中国の支配下になり強く影響を受けます。

いっぽうベトナム中部のフエ地方はチャム族王国が作られ、交易などで15世紀ごろまで栄えます。
また南部のメコンデルタ地方にはクメール族の王国がありました。

紀元後 939年の白藤江の戦いで中国の支配を退けた呉権が初の民族王朝「呉朝」を北部に樹立。

それ以後いくつかの王朝が相次いで成立し、南進政策が進められます。

13世紀には三度にわたりモンゴル軍に攻め込まれ、ハノイは一時陥落しました。

ベトナム軍はその後撃退に成功しましたが、国が乱れ次の王朝にとってかわります。

1802年にグェン・フック・アインが、ベトナム最後の王朝である「阮(グエン)朝」を建国。

中部のフエに都をおき、ベトナムの南北を初めて統一します。この時フランスの力を借りたため、その後のフランスの進出を許すことになります。

19世紀中ごろよりフランスの本格的な植民地支配が始まり、ベトナムはフランス領インドシナの一部とされました。

その後ホー・チ・ミンらによる反仏独立運動が始まります。第二次世界大戦中には日本軍が進駐し、戦後になって独立運動が活発化します。

1945年ホー・チ・ミンはベトナム民主共和国の成立を宣言しますが、フランスは再び植民地化を試み、第一次インドシナ戦争 (1946年から1954年) が勃発。

1954年のディエンビエンフーの戦いでフランスが敗北し、ベトナムは独立するも北緯17度線で南北に分断されました。

社会主義国になることを恐れたアメリカは南のベトナム共和国(南ベトナム)を支援。

北は社会主義体制のベトナム民主共和国(北ベトナム)となりました。
1964年のトンキン湾事件をきっかけに両者は戦争に突入します。これがベトナム戦争(第二次インドシナ戦争) です。

その後世界的な反戦運動や戦争の経済的負担のため、1973年にアメリカ軍は全面撤退。

1975年4月30日、北ベトナムと南ベトナム解放戦線がサイゴン (現在のホーチミン) を制圧し戦争は終結しました。

この戦争での犠牲者はアメリカ軍約5万8千人、ベトナム人は南北合わせて300万人以上に上りました。

翌1976年には南北が統一され、現在の「ベトナム社会主義共和国」が正式に成立しました。


この統一は長きにわたる分断と戦争に終止符を打ち、ベトナムが国家として悲願の独立を成し遂げ、安定と成長を築く原点となりました。

そして2025年4月30日にベトナムは南北統一50周年を迎えました。

当日は祝賀ムードも高まり、ホーチミン市内では盛大な式典と軍事パレードや行進が行われました。

何千人もの人々が市内に集まり、多くの人々を魅了しました。
毎年4月30日は「南部開放記念日」として、ベトナムの祝日になっています。

ベトナムの歴史や背景を少し勉強してから遺跡や博物館を訪問すると、より深く理解でき感動や学びも深まります。

 ホーチミン 統一会堂の戦車

5,ベトナムのグルメ

ベトナムは南北に長い国土を持っており、そのため地域によって様々な料理があり食文化も大きく異なります。


北部のハノイは、「フォー」が非常に有名。

この地域は、寒冷な気候が影響してすっきりとした味わいのスープ料理が多いことも特徴です。

一方、中部のフエ地方は、ベトナムの古都であり、宮廷料理の伝統が残るエレガントな料理が豊富です。フエならではの「ブン・ボー・フエ」という辛くて濃厚な牛肉のスープ麺は、全国的にも高い人気です。

そして南部のホーチミンはフルーティーで甘めの味付けが好まれ、海鮮を豊富に使った料理が人気です。

このようにベトナムには、それぞれの地域で個性豊かな食文化があります。

また辛すぎることもなく、ヘルシーで繊細な味が比較的日本人にあうのもベトナム料理の大きな魅力です。

伝統料理「フォー」とは、米粉を使った幅広い麺で非常に柔らかい食感です。特に牛肉が入ったフォー・ボーや鶏肉のフォー・ガーは、素材の旨味が詰まっていて絶品です。

鶏肉入りフォー・ガー

ベトナムは麺料理がとても多く、種類は160以上あり麺の種類も多彩です。

代表的な麺料理は、 牛肉入りフォー・ボー、 鶏肉入りフォー・ガー、 ピリ辛スープのブン・ボー (・フエ) 、 細めん豚骨スープのフー・ティウ、 カニ入り汁麺のバイン・カイン・クア、 鶏肉スープ春雨のミエン・ガー、 北部のベトナム風つけ麺ブン・チャー、 ホイアン名物汁なし麺カオ・ラウ などが有名です。

見た目も美しい生春巻きや揚げ春巻きは、新鮮な野菜と海鮮、または肉をライスペーパーで巻き、ディップソースで楽しむスタイルが人気です。

店舗によっては自分で具材を詰めて作る生春巻きも楽しめます。

ほかには、フランスパンに具材をはさんだサンドイッチ「バイン・ミー」、海老や豚肉を米粉生地でパリッと挟み焼きにした「バイン・セオ」、炭火焼の豚肉や鶏肉がのったワンプレート定食「コム・タム」、ベトナム風角煮の「ティット・コー・チュン」など有名です。

海鮮ものでは カニ、エビ、イカ、貝類の料理がとても豊富です。海岸沿いのリゾート地だけでなく、都市部でも楽しめます。

個人的にはハマグリのレモングラス蒸しの「ゲウ・ハップ・サー」がコスパ良く一押しです。

ベトナム料理に「ヌクマム」(魚醤=ベトナム風ナンプラー)は欠かせない調味料の一つで、その豊かな風味が料理に独特の深みを加えます。このヌクマムをベースに様々な香辛料やハーブを組み合わせ、その調和の取れた味わいが料理を際立たせています。

初めて食べる人には少しクセがあるかもしれませんが、慣れるとその風味がやみつきになる方も少なくありません。
そして、ライムや唐辛子といった刺激的な味わいもアクセントとしてたくさん取り入れられており、バランスも絶妙です。

また、「ヌクチャム」と呼ばれる甘辛酸っぱいソースは、ディップやドレッシングとして広く使われる万能ソースです。

これら調味料の絶妙な組み合わせにより、ベトナム料理の独自性が際立っています。

ベトナムの食文化は長い歴史の中で、中国やフランスの影響を強く受けています。それぞれの食文化が融合した独自の味覚の世界にぜひ舌鼓を打ってみてください。

 田舎の市場のイカとタコ